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2.大阪湾ベイエリアの課題
大阪湾ベイエリアヘの期待が、近年急に高まってきた背景は、以上のような大阪湾をめぐる歴史の流れの変化と、新しい時代へ向けての再生の期待が出てきたためと考える。
ここで根底的課題となるのは、グローバル経済化が進展する中での、関西経済の位置づけである。これは極論すれば、大阪の将来における位置の明確化であり、大阪都心の機能強化の方向と再編の課題でもあるこの動向が大阪湾ベイエリアの基本方向を探るうえでの、最も重要な課題である。
さらに、大阪湾に限ったことではないが、臨海工業用地の地権者は、ほとんど民間であるこの点で大阪湾ベイエリア開発は構想を計画に、計画を事業に進めていくには、地権者自ら独自に進めるか、地権者が行政と一体になった組織づくりをして進めるか、二者択一になる。ここに従来にない課題があるといえる。
こうした中で行政の課題は、時間的にも火急的なことは、徹底した基幹的社会資本整備である。
3.大阪湾ベイエリアの将来像・考
今、大阪湾ベイエリア開発は関西国際空港の開港をはじめ、数多くのビック・プロジェクトが完成し進行し、大阪湾ベイエリアを総合的・一体的に開発整備することを目指している。その実現のために、すでにグランド・デザインも策定され、続いて「大阪湾ベイエリア開発推進機構」も設立(1992年)されている。
また、1992年2月には「大阪湾臨海地域開発整備法(以下「ベイエリア法」)が制定され、次いで1993年8月に「ベイエリア法」に基づき「大阪湾臨海地域及び関連整備地域」の指定も実行されている。
これらは21世紀に向け、高い飛躍と、様々な可能性を秘め、大阪湾を取り巻く広域的地域連係の活性化に大きく貢献するものと期待されている。
しかし、都市づくりを考えるとき、地域との共存を考慮した広域的視点を持つことは欠かすことができない。各首長は住民の選挙で選ばれたとはいえ、広域ネットワークや隣接する都市との調和を保ちながら行政推進することが必要かつ重要な時代である。その中で特色ある魅力的な都市づくりを展開しなければならない。
今からは、地域のボーダレス化とグローバルな視点が重要視されている。この状況の中で、経済大国となったわが国内では、経済成長の歪みとして多くの課題(環境保全、都市化、交通公害、廃棄物処理問題等)を抱え、国際的には日本国としてのアイデンティティの明確化を問われている。
同時に激変の時代を迎え、これまでの価値観や枠組みが崩れつつある。とくに21世紀の社会を展望するとき、これまでのように効率や機能優先の発送ではなく、文化の視点−ゆとりの時代を先導する「個性」や「賑わい」「美しさ」等−で人々の感性に共鳴する諸条件を備えた都市(地域)こそ、訪れる人々を魅了させ、交流による新しい価値を生み出す舞台づくりが求められている。
まず、母なる海「大阪湾」を市民の手に戻すことである。とくに関西は近いはずの海が遠くなり、久々に見る海は汚れて人々にむなしさを与える。同時に関西圏の多くの生活者は、行政上のボーダー内だけでなく、生活者優先として考えるならば、少なくとも関西圏内の広域的地域連係都市としてボーダーレスで有機的な統合化が望まれ、来る21世紀の新しいライフスタイルのためにも必然的に醸成されていく。
そこには、広域的都市連係は、都市と農村、中山間地との交流等で、この恵まれた美しい関西風土の健全のためには大切なことである。
そこで地域の都市群の連係融合しあうボーダーレスなポリスシステムが必要となり、とくに阪神大震災の教訓を充分に生かした防災都市連合をベースとした「広域的地域連係型有機的都市(提案=ガイアポリス)」である。
4.「ガイアポリス構想」について
広域的地域連係型有様的都市とは
「都市は生きている」と言われる大阪湾岸の環状都市群は、各都市の境界を見失うほど、生活圏が相互に連係してゆき、広域的地域として生物のように有機的に息づいている。
現在、大阪湾岸地域には数多くの都市があり、それぞれの都市で独自の基本計画をもち都市づくりが推進されている。しかし、21世紀の社会・政治・経済・ライフスタイル等から大阪湾岸地域の都市の行政中心の境界には限界が生じてきている。必要なのは生物を彷彿させるような、有機的に総合的一体機能が発揮できる広域的地域連係都市圏づくりのポリス・システムの確立が、今、求められている。
このような大阪湾岸地域の都市群が「住、職、学、遊潤等」で融合しあうボーダレスなポリス・システムをギリシャ神話の“ガイア(地母神)”にちみな『ガイアポリス』と名付け、その真意(こころ)は“雄大で生き生きとした統合で、快適な環境づくり”のまちづくり。そこには、平和を願う海洋国日本があり、『ガイアポリス(広域的地域連係型有機的都市)構想』は、世界、とくにアジア・太平洋地域の次世代を産み出す「母なる子宮」でもある。

 

 

 

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